オーランド♂

アメリア♀

ボーマン♂

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オーランド
行方不明になっていた女性が救助された。
豪華客船に乗っていた彼女は、手すりから誤って身を滑らせ、海に落ちたのだ。
数日の間に救助されたのだが、これから記述するのは彼女が話したことだ。

船から落ちた後、海を漂っていると、古い古い船が見えた。
その船の周りにだけ、嵐が吹いていた。
船には一人の、骨だけの男が、何かを叫びながら舵を取っていた。

彼女は、その男に助けられたのだという。
そして、船に上げられると、骨だけだったはずの男が、美しい男に変わっていた。
何日もの間、彼と話したのだという。

やがて、彼は、言った。君を迎えに来る船があると。
気がつけば、彼女は、船から海に落とされていた。
最後に見た彼は、目には寂しさを、口元には笑みを浮かべていた。
その後すぐに、彼女は救助されたのだという。

ここまでが、彼女の話だ。


ボーマン
「この時代に幽霊船なんて!」


アメリア
「彼の名前が思い出せない・・・」

オーランド
そう呟いて彼女は泣いた。

ボーマン
「馬鹿馬鹿しい!おい!もうやめておこう!きっと錯乱してるんだ!」

オーランド
「もうすこし言葉を選べ、彼女が錯乱しているようにみえるか?」

オーランド
僕の言葉に彼は溜息をつくと、椅子に座りなおす。

オーランド
彼女は数週間そこに居たというが・・・。
実際は3日ほどしか経ってはいなかった。

オーランド
「その船の名前は覚えているかな?」

アメリア
「彼の名前も思い出せないのに、船の名前なんて・・・」

オーランド
「いや・・・覚えているはずだ、よく思い出してみてほしい」

アメリア
「いえ、まって・・・。そう、そうよ、アルカディア・・・エターナル・アルカディア!それが彼がいた船の名前よ!!」

ボーマン
「ふん!・・・くだらん!」

オーランド
「エターナル・アルカディア・・・僕もその船に乗ったことがある」

アメリア
「え・・・?」

ボーマン
「なんだ、お前まで幽霊船に乗ったとかいうんじゃないだろうな?」

オーランド
「そのとおりさ」

ボーマン
「おい!もうよしてくれ!そんな話をだれが信じるものか!」

オーランド
「・・・・・・・」

アメリア
「・・・わたしは、あそこに居たわ・・・名前も思い出せないけど、たしかに彼と一緒に過ごしたのよ!」

オーランド
彼の言葉に、彼女は声を荒げる。一呼吸おいてぼくは彼女に言った。

オーランド
「ぼくは、信じるよ」

ボーマン
「おい!」

オーランド
「ぼくも確かに、昔、彼と会ったことがある」

オーランド
「あれは、子供のとき・・・海に遊びに行き、泳いでいたとき。
 急に嵐が吹き荒れ、遠海まで、流されてしまったときの話だ。

 そのとき、ぼくは彼に会い・・・そして、彼女と同じように、助けてもらったんだ」

ボーマン
「そんな話、初めて聞いたぞ」

オーランド
「君がいった様なことを言われたからさ、誰も信じちゃくれなかったよ」

オーランド
「アメリア、彼はなんと言っていた?」

アメリア
「・・・えっと、そう、こう言っていたわ!」

オーランド&アメリア
「「僕は永遠に彷徨(さまよい)い続ける。この海を、永遠に・・・」」

オーランド
「彼はいつまで、彷徨い続けると話した?」

オーランド
僕の言葉に、彼女は少し思い出すように瞳を動かした後、僕の目を見つめた。

オーランド&アメリア
「「全ての者が幸せになるその日まで」」

ボーマン
「お前さんたち・・・会うのは今日が初めて、、だよな」

オーランド
「・・・勿論、初めてさ」

オーランド
彼が犯した罪は、神を呪ったこと、この世に苦痛が多すぎること、、身を犠牲にしても全ての人を護りたいと願ったこと・・・。
望むものが大きすぎたのだ・・・。

アメリア
不幸があるから幸せがある、自然の摂理、犠牲になるものがいるから、生きられる者がいる・・・。
彼はそれを否定した。

オーランド
幸せな世界を幸福だけの世界を望んだのだ。
だが、全てが幸せなら、それは幸せと言えるのだろうか?しかし・・・幸せなら、争いは起こらないかもしれない、無駄な競争も無くなるかもしれない・・・。

オーランド
考えても答えは出ないが、それでも確かなことがある、ぼくも、そして、おそらく彼女も、、彼の優しさを忘れはしないだろう。
全ての者が幸せに、この世から苦痛がなくなるまで・・・。
嵐を纏い、不平等な世界を創った神に、呪いの言葉を浴びせながら・・・。
彼は、いまも彷徨い続けているのだろう。

アメリア
蒼い蒼い、海の上を、、たった一人で・・・。

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