タイトル 〜恋愛小説家 〜心叶う夢〜 

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小説家となった純と、心と叶の恋愛模様・・・・そして、書くつもりのなかった、愛の死因・・・・。それを書いていこうと思う。

話の内容は、暗いです。ヘビーです。
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♂ 2 ♀ 2 の台本です。
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登場人物

心(こころ) ♀

学校を卒業し、叶に告白。
付き合うことになったが、お互いに先生とさん付け。
現在は編集者の卵として、切羽琢磨している。純の同級生と言うことと、純自らの願いもあり担当に抜擢される。
それと同時期に夢という作家志望の少女と出会い、純に紹介をする。

叶(かなえ) ♂

心と純が通っていた学校の先生。
卒業した心と付き合っている。
でもどこかしら、生徒と先生の壁を崩せないでいる。

穏やかで優しいが、意外と勘が鋭いところは相変わらず。

純(じゅん) ♂

新進気鋭の作家として売れてきている。
書く内容は恋愛的なものが多い。
まだ20代も前半だが、静かで落ち着いている。
人生などを達観している感じもするが、まだ若さもあり、世間から距離を置いているといったようにもみえる。

同じく作家を目指しているという少女、夢を心に紹介される。

夢(ゆめ) ♀

嘗て愛に助けられたことのある少女。
愛の死んだ原因になった。
ずっと、愛が死んだ理由で苦しんでいる。
作家の道を選び、純に師事するが・・・・。

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心N
卒業してから数か月後、わたしは、叶先生に会うために、学校へと向かう。


「叶先生!」


「あ、心さん、久しぶりだね、どうしたんだい?」


「あの、、、今日、学校が終わった後って、お時間ありますか?」


「大丈夫だと思うよ」


「あの、ずっと、、、いえ、、話したいことがあるので・・・・」


「うん、わかった」

心N
卒業式の日に、劇的な告白とかも考えたんだけど・・・・やっぱり、、心の準備というか、覚悟というか・・・・学校を卒業したら告白するんだと言っていた割には、いざそうなると、なかなか・・・・ね。




「卒業してからはどうだい?」


「うん、私はいつも通り!・・・・先生のほうは?」


「ふふ、僕もいつも通りだよ」


「・・・・・・」


「・・・・・・」


「あの、前に生徒と先生が付き合うのって・・・・」


「うん」


「ううん、なんでもないです!!」

心N
落ち着け私!、、今日は、今日こそ言えるんだ・・・ずっと、先生が・・・・。


「・・・・あのね、先生、学校に行っていた時から、卒業したら、絶対に言おうと思ってたことがあるんです」


「なんだい?」




「・・・・先生の事が、、好きです」


「好きです!」


「うん」


「わたしと、わたしと付き合ってください!」


「・・・・・・・・」


「・・・・・・・・」

心N
長い沈黙、実際は、数十秒とかそんなものなのかもしれないけど、すごく、すごく長く感じた。


「僕でよければ」

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「あ、あの!!」


「はい!」

心N
私が編集者をしている会社に、一人の少女が訪ねてきた。
作家を目指しているらしく、物語を読んでほしいということだった。
すぐに読むことはできないこともあるんだけど、偶々(たまたま)時間もあったので、読ませてもらうことにした。


「ど、どうでしょうか」


「うん、話はいいとおもうよ、あとは、もう少し崩した書き方をしてもいいかも」


「は、はい・・・・」


「なんて、わたしもほとんど新人みたいなものだから、あまり気にしないでね」


「好きな話を好きなように書いたほうが、いいと思うし」


「そ、そんなものでいいんですか?」


「うん、誤字脱字はなるべくない方が良いけど、しょうがないと思うし」


「あとは、話と言葉がしっかりしていれば、そこまで読んでて苦にはならないから」


「はい」


「それに、あなたは、えっと、夢ちゃんだっけ?」


「はい、そうです」


「まだ若いし、これからこれから、それにこの話、私は好きだよ。ほんわかしてるけれど、どこか切ない話、キャラクター構成もしっかりしてるし」


「あ、ありがとうございます!」


「また、別のが書けたらもってきてね!あ、これ、誰かに見せてもいいかな?」


「は、はい!お願いします!」




「あ、、、あの!・・・・純先生って、どんな人かご存知ですか?」


「純?・・・・知ってるよ、あ、もしかしてファンとか?」


「あ、はい、純先生の書いた本好きで・・・・」


「ふ〜ん・・・・会わせてあげよっか?」


「えっ!?・・・・あ・・・で、でも・・・・そのご迷惑じゃないでしょうか?」


「大丈夫だと思うよ、それに同じ作家同士なんだし、いい刺激になるかもしれないし」


「そ、そんな!純先生と同じ作家だなんて、わたしなんて本もまだ出してないですし・・・・」


「あはは!あのね、わたしはこう思ってるんだ。物語を考えてそれを形にする、ゲームでも漫画でも、勿論小説でも、、なんでもそう、そういう物語を作っている人たちは、みんな作家なんだって!」


「そんな、わたしなんて・・・・ん・・・・」


「どう?夢ちゃんさえよければ、話し、してみるよ?」


「・・・・」


「あー・・・・急な話すぎる、かな?」


「そ、そんなことないです!純先生にお会いできるなら、ぜひあってみたいです!」


「じゃあ近いうちに、連絡するね、電話番号とか教えてもらってもいいかな?」


「は、はい!」




「あの!た、楽しみに待ってます!」



心N
そう言って、夢ちゃんは満面の笑みで帰っていった。


「かわいい娘だったなぁ〜、よし!純にも読んでもらって、会わせる段取りをつ〜けよっと!」

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心N
数日後、夢ちゃんの物語を純にも読んでもらおうと、わたしは純の家へと足を運んだ。


「じゅ〜ん!」


「うん?ああ、心か・・・・どうしたんだ?」


「へへ〜、これ読んでみてよ!」


「ん?」


「どうだった?」


「・・・・書き方はまだあどけない感じがするけれど、話の内容はしっかりしていると感じるな」


「うんうん!・・・・それからそれから!?」


「話としては、そうだな・・・・どこか寂しさを感じるというか・・・・」


「寂しさ・・・・?」


「キャラクターや、話の内容は明るくて、ハッピーエンドなんだけれど、、それだけじゃないような何かを感じるんだ」


「寂しい、か、そんな風には見えなかったんだけどな・・・・でも、すこし切ない感じはするよね」


「・・・・この話は、誰が書いたんだ?」


「えへへ、このあいだ、編集部に持ち込みに来た子でさ〜」


「明るくて、笑顔がかわいいこなんだよ、純の書いた本も持ってるって」


「そうか」


「ね、会ってみてあげてくれないかな?」


「いや、俺は・・・・」


「いつも仏頂面して、なんかどこか達観してて・・・・」


「・・・・・・」


「どーせ、私以外の人とは全然あってないんでしょ?カビはえちゃうよ」


「・・・・まぁ、そうだが・・・」


「じゃあ決まり!あってみてよ!」


「・・・・お前は、学生時代から変わらないな」


「変わりませんよー!私は私だもの!純こそ、何、爺くさいこと言ってるの!」

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心N
純に会わせる約束を夢ちゃんと取り付けて、待ち合わせの時間と場所も決めて、私たちは夢ちゃんを待っていた。


「お、おまたせしました!」


「すいません、待たせちゃいました、か?」


「ううん、そんなことないよ、約束の時間まで、まだあるし」


「君が、夢ちゃんかい?」


「は、はい!あの純、先生ですか?」


「ああ、俺が純だ」


「もう、純ってば、もう少し愛想よくできないかなぁ〜怖がられちゃうよ?」


「え!?あの、そんなことないですよ!」


「・・・・・・愛想がないとか、カビがはえるとか、言いたいこといってくれるな」


「なに?本当の事じゃない」


「そ・れ・に、現役女子高生だよ?男なら嬉しくないわけないでしょ!?」


「あのなぁ、心・・・・俺はそこまで歳じゃないぞ」


「歳とか関係ないでしょ」


「ふふ」


「ほらほらー、笑顔の可愛い女子高生だぞ!もっと、いいとこみせないと!」


「あのなぁ・・・・」


「まぁ、とりあえず、喫茶店にでも入ろうか?」

夢N
喫茶店に行こうということになり、心さんのおすすめのお店 アプリコット・ティアリティ というお店へと入る。


「ここ、値段も手頃だし、美味しいんだよ。あ、お腹すいてない?」


「紅茶とかケーキも美味しいけど、ピザとかスパゲティーとかも美味しいんだよ」


「腹、か、少し減ったかな、みんなで食べられるし、ピザでも頼むか?」


「そうだねぇ〜、じゃ、今回の支払いは私がしようではないか!」


「え、あ、お金なら少しもってきて」


「いいからいいから〜、貧乏小説家と学生さんなんだし」


「おいおい、確かに今はそこまで贅沢はできないが、、奢れないほどではないぞ」


「つよがらないの!」


「いや、、強がってるわけじゃないが・・・・」


「もっと売れだしたら、なにか奢ってよ!」


「はぁ、わかったわかった」


「ふふ、本当に仲がいいんですね」


「まぁ、もう6年以上の付き合いだからな」




「え・・・・夢ちゃんって、あの学校なの!?」


「それはすごいな、俺たちが行っていたところよりもランクは上だ」


「そ、そんな、いい学校に行っているからといって、そのあともうまくいくとは限りませんから」


「夢ちゃんは大人だな〜・・・・。高校の時の私って」


「いまも変わらないだろう」


「え〜なんだってー!・・・・って、あ、きたきた」

夢N
色々話しながら、ピザを食べ終わり。食後のデザートと飲み物を頼む。
純先生はレアチーズケーキとコーヒー、わたしはいちごのショートケーキとブルーベリーの紅茶、心さんが、ティラミスとアプリコットティー。



「というわけで、純、夢ちゃんの小説の面倒みてあげてよ!」


「面倒を見ろと言われてもな・・・・」


「読んで、ここはこうした方が良いとか、感想を言ってあげるとかでいいからさ!」


「夢ちゃんは」


「わたしの方こそお願いしたいです!」


「ね、夢ちゃんもこう言ってることだし!」


「はぁ・・・・わかった」


「ありがとうございます!・・・・でも、ご迷惑、ですよね」


「迷惑というよりは、、俺もまだそこまでの作家ではないからな・・・・」


「細かいことはいいからいいから!これで二人は師弟関係!」


「師弟関係になったわけだし、純もさ、夢ちゃんの事呼び捨てでもいいんじゃない?まぁ、夢ちゃんがよかったらだけど」


「いや、でもな・・・・」


「わたしは、構いませんよ!・・・・先生の弟子になるってことですし」


「いや、弟子とか・・・・あー・・・・本当にいいのか?」


「はい!わたしは純先生の書いた物語、好きですし、色々知りたいですし!」

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心N
先生とのデートの日、わたしは夢ちゃんのことを先生に話す。


「かわいい娘でさぁ、まるで妹みたいなんだ〜」


「ふふ、それはよかったね」


「明るくてぇ〜、元気で〜」

叶N
心さんが夢ちゃんについて話す・・・・ぼくは、なんとなくその夢ちゃんに違和感を覚えた・・・。


「・・・・その娘、本当に明るいかい?」


「え・・・・?」


「ああ、うん、偶(たま)にね、いるんだ、無理に明るく振る舞う子が」


「うー・・・・あの娘はそんなことないと思うな」


「あはは、そうなら、僕の取り越し苦労だね」


「本当だよ、先生は心配性なんだから!」

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夢N
あの時と同じ、寒い日の悲愛湖(ひあいこ)・・・・そこで、心さんと純先生を見かけた。
私が昔、溺れた場所・・・・。


「先生!心さん!」


「ん?ああ、夢か・・・・」


「夢ちゃん!奇遇だね、どうしたの?」


「いえ、お二人の姿が見えたものですから」

夢N
怖くて近寄れなかったけど、向き合わないといけない事実・・・・。
だから、調べてみた、あの日のこと、その次の日に湖で見つかった、お姉さんのこと、、、


「あの・・・・湖にお花を手向(たむ)けていたみたいですけど、、ここで何かあったんですか?」


「ま、な・・・・幼馴染が・・・・。昔、ここで溺れて死んだんだ」


「愛(まな)って娘でさ、私の親友で、純の・・・・恋人だったんだ〜」


「・・・・」


「そうだったんですか・・・・」

夢N
先生と、心さんの同級生だった人が、昔、ここで・・・・昔と言っても、ほんの6年前・・・・。やっぱり、そうなんだ、、二人の大切な人・・・・あの時のお姉さん・・・・。


「さっ!わたしはもう戻らないといけないから、先に帰るね」


「ああ、俺も、そろそろ家に戻るよ」


「は、はい!お仕事頑張ってください!」


「あはは!夢ちゃんも、小説がんばってね!」


「はい!」


「あ、あの!最近寒くなってますから、お体に気を付けてくださいね!」


「ああ、わかってる」


「あはは!夢ちゃんもね!」

夢N
そう言って、先生と心さんはその湖から去って行った。

夢N
二人の姿が見えなくなったのを確認してから、わたしは、持ってきていた花をカバンの中から取り出して、湖に流す・・・・。


「わたしって、やっぱり、ずるい人間ですよね」


(ごめんなさい、、愛、お姉さん・・・・)

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純N
心に紹介されてから、度々(たびたび)、夢は俺の所にやってくる。


「ここは、こうしたほうが、わかりやすいかもしれないな」


「はい、、あ、でも、それだと、ここが少しおかしくなりませんか?」


「そうだな、ならそこは・・・・」



夢N
物語を書いて、それを先生に見てもらって、こうやって話しながら、こうした方が良いかも、ここの表現はこうした方が読んだ人にわかりやすいかも、そんな話をしているいまが、今までで一番楽しいと思えた。


(それは自分の犯した 現実 を忘れられるから?)


「っ・・・・・・・」


「?どうした?」

夢N
物語を書いているときは、自然と、現実を忘れられた。
6年前に悲愛湖で亡くなったお姉さんの事を調べて、その学校に行って・・・・。
一人の先生が、心さんと純先生の事を教えてくれた。
純先生の本を探して、どこの出版社か調べて・・・・。
自分でも物語を書いて、出版社に持ち込んで・・・・。
そうやって私は、、こうして純先生と知り合った。


「大丈夫か?」


「っ、平気、です」


「なら、いいんだが・・・・今日はこのくらいにしておこうか?」


「・・・・はい、ごめんなさい」


「いや、いいんだ、気にしないでいい」

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「この話、良いと思うよ!」


「そうですか!?心さん、ありがとうございます!」


「こんな感じで、どんどん書いて行ってね!・・・・あ、でも無理はしちゃだめだよ?」


「はい・・・・。そ、そうです!一つお尋ねしたいことがあるんですけど・・・・」


「うん?なになに?どうしたの?」


「純先生と、、愛さんの事について、なんですけど」


「・・・・ああ、、愛のことかぁ」


「だめ、、ですか?」


「そんなことないけど・・・・わたしよりも純に聞いた方が・・・・」


「ぁ・・・・」


「やっぱり、聞きにくいか、ごめんね、デリカシーないこと言っちゃって」


「い、いいんです!わたしこそ、こんなこと聞くなんて、いけないかなって思います、でも、どうしても聞きたくて・・・・」


「うーん、少し長くなりそうだけどいい?」


「は、はい!大丈夫です」


「それじゃあ、ちょっと待っててね、コーヒーと紅茶、どっちがいい?」


「え・・・あ、あの」


「遠慮しないの!それにどうせ会社のだしね」


「それじゃあ、紅茶の方で、お願いします」




「はい」


「ありがとうございます」


「それじゃ、、うーん、どこから話そうかな〜・・・・」




「愛とは高校の時に出会ってさ、私から声かけて、仲良くなって」


「家庭的で料理とか得意でさ、控えめなところとか、物静かなところとか、結構男子からも人気があって!」


「純もさ、すっごいモテたんだよ!スポーツも得意で勉強もできてさ!」


「そうなんですか」


「そうなんだよ〜!純は今でこそなんか、人を避けてるって感じだけど、昔はああじゃなくてね、もっと、明るい印象だったよ」


「でさでさ!純とは幼馴染でさ、お互い好きなはずなのに、告白とかできなくて」


「それもまぁ、青春だけど、、みてて、歯がゆいっていうかぁ〜ねっ!」


「はい・・・・」


「しょうがないから、私が一肌脱ごうってことで!」


「で、甘味屋にいったりして、昔の話とか色々話して」


「・・・・・・・・」


「そこで、純が・・・・物語、書いてるって・・・・しって〜」


「でも、さぁ・・・・ほんとに 急に・・・・あの湖で、  死んじゃって    」


「・・・・・・・・」




「あの時・・の・・純はさぁ、ほんと・・・・」


「いま・・・・なんて、なんか・・・・クール・・・・装って〜・・・・」

夢N
心さんの話は、心に重く響いてくる・・・・その幸せを壊した張本人が、わたしだ・・・・ちゃんと聞かなきゃいけないのに、、心さんの声が壊れたラジオみたいに聞こえてくる。


「?夢・・・・ちゃん?」


「・・・・・・」


「夢ちゃんってば!」


「あっ!は、はい!」


「・・・・大丈夫?」


「あ、はっ、はい、大丈夫です!」


「ならいいんだけれど・・・・あ〜、もしかして、徹夜でもしたなぁ〜?」


「少し・・・・」


「な〜ら、今日は帰ってゆっくり休まないとだめだぞっ」


「はい・・・・」


「話なら、また今度してあげるからさ!夢ちゃんと話すの私も楽しみにしてるし、また絶対にきてね」


「はい・・・・。それじゃあ、今日はもう帰って、ゆっくりと眠ることにします!」


「うん、そうした方が良いよ、無理して、体壊しちゃったら意味ないんだから」


「そうですね、今日も、ありがとうございました!」



心N
夢ちゃんは、いつものような可愛い笑顔を残して去っていく。




「・・・・?」

心N
でもなんだろう、、去ってゆく夢ちゃんに、ほんの少しだけ、違和感を感じた・・・・。
・・・・私はこの違和感を、気のせいだって流した・・・・。

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夢N
先生と話すことが多くなるたびに、先生へと気持ちが揺れる・・・。
これが、好きっていう気持ちなのかな・・・・?


「純、先生・・・・」


(先生に取り入って、それでどうするの?そうやって、同情をひこうってつもり?)


「そうだ、、わたしは、ずるい」


(先生が好き?)


「・・・・好きだと思う」


(あなたがどれだけ先生を好きでも、彼はその気持ちには答えてくれないよ)


「・・・・わかってる」


(だってあなたは、その先生の大切な人を 殺したんだから )


「・・・・・・」


(なのに、色々調べて、まるで探偵か付きまといの様に!)


(いつも笑顔なのも、いい学校に合格して、生徒会長したりしてるのも、全部全部まやかし!あなたは・・・・嘘つきでずるくて、ただの 人殺し )


「わたしは、嘘つきで、、人殺し 」


(そんな犯罪者以下の存在が生きてていいと思ってるの?・・・・人の幸せを奪ったくせに、謝ってどうするの?事実を話してどうするの?)


(あなたの与えた傷を抱えて、それでも一生懸命生きてる人に近づいて、それでなにがしたいの?・・・・大切な人を殺した癖に、自分がそれに代われるとでも思っているの?)


「ちがう、、そんなつもり、じゃ・・・・」


(そうやって、可哀想に被害者ぶっていれば、誰かが助けてくれる?・・・・あなた見たいな人は、苦しんで苦しんで、死ねばいい)


(大切な人の幸せを奪った、人殺し 人殺し 人殺し 本当はずるくて、最低な ただの 人殺し ・・・・本当に、生きてていいと、思ってるの?)

夢N
気づいてほしい、私は本当は、明るくて・・・・元気で・・・・優等生な、そんな女の子じゃないってことに、本当は・・・・弱くて、ずるい、ただの・・・・。


(人を殺して、人の幸せも奪って、家族も廻りも全部偽りと嘘で固めて騙して、自分さえも騙して・・・・かわいい笑顔?優等生?・・・・馬鹿じゃないの!?そんなのぜーんぶ嘘じゃない!?人を欺(あざむ)くための嘘!)


(本当の自分がなんなのかさえ分からない、助けてと声に出しても言えない弱い弱い娘!・・・・そんなのがこの先、生きていけると思ってるの?)


「本当のわたし・・・・わたしは、わたしは・・・・」


(あなたにできることなんて、何もない、何もないのよ?・・・・卑しく体でも売る?穢れた体、穢れた心のあなたなんて、だれも見向きもしない!それとも病気にでもなって悲劇的に死んでいく?・・・・それも演技、みんな演技・・・・本当のあなたは全部!仮初(かりそめ)で、中身も何も無い、惨めな女!)


(あなたに幸せなんて、死ぬまで訪れない!苦しんで死ね!死ね!死ね!死んじゃえ!嘘つきで、弱い、人殺しで、それでも同情されたがっている惨めな女)


「こんなこと、考えたくない・・・・でも、どうしてもひとりになると・・・・」


(あなたに幸せなんて絶対に訪れない!苦しんで苦しんで、死んで逝け)


「もう、、涙も出なくなっちゃった・・・・わたしは、、なんなんだろう・・・・」


(あなたにできることなんて、この世に何一つない)


「わたしにできることは、只、嘘をついて生きていくだけ・・・・」


(そう、あなたは只の嘘つき、被害者ぶっているだけの、悪者)




「わたしは、只の・・・・悪者・・・・そうだ、その通りだ・・・・」


(そんな気持ちで生きていても、あなたは幸せにはなれない)


「だからわたしは、、ハッピーエンドに憧れた・・・・」

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夢N
もう何度めだろう、、こうして、純先生と話しをするのは・・・・。
わたしは、今なら言える、言わなくちゃいけない、そう思って、重い口を開く。


「先生・・・・わたしは、先生の事が好きです」


「先生としてとかじゃなくて、一人の、男性として、先生が好きです・・・・」


「・・・・気持ちは嬉しいけれど・・・・その気持ちには答えられない」


「っ・・・・」


「俺には、もう、決めた奴がいるんだ」


「それって・・・・愛さんですよね・・・・」


「・・・・」


「・・・・愛さん、、悲愛湖で溺れて死んじゃった人ですよね」


「・・・・そう、だ」


「・・・・わたし、ずっと隠してたことがあるんです」


「おとうさんにもおかあさんにも言えなかったこと・・・・」


「・・・・あの雨の日、悲愛湖で助けてもらったお姉さんの事・・・・」


「足を滑らせて、湖に落ちて、溺れてた、私を助けてくれた人のこと・・・・」


「泳いで湖からわたしを助けてくれた、、でも、自分は湖から上がることが出来なくて、溺れて・・・・お姉さん、溺れ、、おぼれっ、、て、、どんどん遠くに流されて!」


「なのに!怖くて、怖くて、誰も呼べなくて!お姉さんが沈んでいくとこ、泣きながら見ていることしかできなくて!!!」


「・・・・そのまま、逃げる様に家に帰って・・・・ずっと、ずっと、忘れられなくて・・・・」


「・・・・怖かったけど、調べたんです。あの時の、、お姉さんのこと・・・・」


「物語を書いている間は、現実を忘れられた・・・・。先生の学校で訪ねて、先生がお姉さんと関係があることを知って、、、、」


「愛さんが亡くなったのは、、私のせいなんです」


「・・・・・・・」


「・・・・・・・」


「愛が、したことだ・・・・君のせいじゃ・・・・」


「うそ!!本当は、本当は、っ!!」

夢N
わたしはそのまま、先生の家を飛び出した・・・・。いつもそうだ、こうやって逃げて・・・・あのときだって、誰かを呼ぶことができたら、先生の大切な人は・・・・。

夢N
罵ってくれた方がよかった・・・・。
お前のせいで愛は死んだんだって、、、そう言ってくれた方がよかった。
・・・・優しい先生・・・・わたしのせいで、わたしのせいで・・・・。




(苦しいんでしょ?なら死んだ方が良いよ)


「死にたくなんてない」


(ならまた逃げるの?逃げて、逃げて、逃げ続けて、自分を、誰かを騙して生きてきて、また逃げるんだ)


「・・・・これも逃げなのかな」


「頭の中に響く、この声も、、死ねば、やむのかな・・・・」


(今度は、死ぬことで逃げるんだね)


「(でも、わたしは・・・・もう・・・・)」


(「    生きてはいけない    」)

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「じゅ、純!大変!!大変だよ!夢ちゃんが、夢ちゃんがっ!!」


「・・・・・・・」





「・・・・あんまり、驚かないんだね・・・・」


「・・・・・・」


「夢ちゃんから、なにか聞かなかった?」


「数日前に、家に来た・・・・そこで、愛の死の原因は、自分だと話された」

心N
純は、その時の事を話す・・・・。わたしはその話を聞いて、何もしなかった純を責める・・・・。


「純は、純はそんなに冷たい人だった!?違うでしょ!?いつまで、いつまで、愛の事を引きずるの!?ねぇ、いつまで!?」


「夢ちゃんがどんな気持ちで、純にそのことを話したか!考えた!?」


「・・・俺にできることは、なにもなかったんだ!」

心N
甲高い音が、部屋に木霊する・・・・。わたしは、純に手をあげていた・・・・。


「・・・・・・」


「っ・・・・!!」

心N
わたしはそのまま、純の家を飛び出した。




「考えなかったわけじゃ、ない・・・・」


「、、、俺に何ができたというんだ・・・・?」

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心N
夢ちゃんが、自殺してから、しばらくたった日、わたしはまた純の家に行った。
・・・・背を向けたまま、彼はわたしの話を聞く。


「あの娘を死なせた・・・・?」


「・・・・・・」


「・・・・・・」


「苦しんでいた、もがいていた・・・・それは、わかった」


「・・・・・・」


「あの娘は、作家だった・・・・間違いなく」


「孤独だった、自分のせいで、愛が死んだことをずっと心に抱いて生きてきたんだ」


「許せなかった?」


「・・・・・・・」


「あいつが、愛が、、やったことだ、、俺は・・・・」


「・・・・・・俺は?」


「まるで、子供か妹のように思っていた・・・・それに、間違いはない」


「作家は、孤独だ・・・・それでも俺には、あいつがいる、あの時からずっと、あいつを感じている」


「だが、夢は・・・・ずっと孤独だったんだ。自分を責めていた」


「支えになる誰かが必要だったんだ」


「なって、あげられなかったの?」


「夢は、心に壁を作っていた、いつも笑顔で、いつも俺を、誰かを困らせない様にと・・・・俺には、その壁を崩してやることができなかった・・・・」


「・・・・そっか」


「もっと色々、聞いてやれば・・・・いや、気が付いてやらなければならなかった・・・・。壁を作っていたのは、俺の方だったのかもしれないな・・・・」

心N
背中を向けたままだったけど・・・・彼が、泣いているのを見たのは、、久しぶりだった・・・・。





「・・・・できた」


「え・・・・?」


「・・・・・・・」

心N
暫くの沈黙の後、彼は、静かに振り向くと、わたしに原稿を渡してきた。

心N
タイトルには 壁と闇 と書かれていた。
心の闇に囚われて、たった一人で苦しんで、たった一人で死んでしまう、少女の話・・・。
純が、誰かの事を題材にして物語を書いたのは初めてかもしれない・・・・。
その話は、重くて、つらくて、悲しい、いままでの純の書いてきた話とは違っていた





「・・・・救えなかったのは、わたしも一緒かな・・・・気が付かなかった・・・・。
ううん、不自然さには気が付いていたはずなのに・・・・」

心N
編集者は作家の気持ちも汲み取らないといけない、、作家は色々な心をもっているから、ちゃんと向き合わないといけないんだ。

心N
純から渡された原稿を抱えて、私も、泣いた・・・・。

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心N
数日後、叶先生がわたしの家に、訪ねてくる。


「叶、先生・・・・」


「根を詰めてるみたいだけど、、大丈夫かい?」


「うん、、平気・・・・」


「他の編集者の人には、反対されてるけど・・・・」


「あの娘の心の叫び、あの娘の言葉、このまま、埋もれさせたくないから・・・・」


「うん・・・・心さんがそう思うなら、そうしてあげるといいと思う」


「・・・・」


「ねぇ、先生!」


「ん?なんだい?こころさ・・・・」


「そのさん付け!・・・・やめない?」


「わたしも、先生じゃなくて、、かな・・・・叶!って、呼びたい」


「・・・・・・わかったよ。・・・・心」


「・・・・うん」


「これで、また一歩、距離が縮まったね・・・・」


「・・・・うん、そうだね」

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心N
夢ちゃんの家族からも、良い返事はもらえなかった・・・・。
当然だよね、娘を失ったばかりなのに、こんな話をされたって・・・。


「それでも、それでも、私は・・・・」


「夢ちゃんの、、書いた物語、絶対にみんなに読んでもらえるようにするからね」

心N
私の勝手かもしれない、全部、私の思い違いと我儘かもしれない、それでもいい
夢ちゃんの書いた話は絶対に、みんなに読んでもらいたいんだ。


「あなたの、生きていた灯(あかし)だから・・・・」

心N
そんなことを考えていると、叶が訪ねてきた。


「こんばんわ、心」

心N
叶が訪ねてきて、他愛もない話をしていると、ふと、叶が真剣な顔になり、話を始める。


「数年前だったかな、純さんが、本当に小説家になりたての頃だった」


「一人の女の子が学校に聞きたいことがあると訪ねてきた」


「その娘の名前が、夢というこだった」


「え・・・・」


「今更だけれど、ぼくも昔にあってるんだ、夢ちゃんに・・・・」


「何を、聞かれたの?」


「悲愛湖で溺れて亡くなった、愛さんのことを聞かれた」


「それで、教えたの?」


「うん、個人情報だから、そんなに詳しくは教えられなかったけれど・・・・」


「愛さんと仲の良かった、心と純さんのことは少し話したんだ、純さんは今は小説家をしているはずだって・・・・」


「勿論、住所とかそういったことは教えなかったけれど、、影がある感じで、なにか思い詰めたような顔をしていた・・・・」


「そんなことがあったなんて・・・・どうしていってくれないかな」


「ごめん、ぼくも夢ちゃんの名前を聞いた時に思い出せばよかったんだけど・・・」


「叶にも、いつか会わせるつもりだったんだけれど、あんなことになっちゃった」


「・・・・あまり、思い詰めたらいけないよ?」


「・・・・うん、わかってるよ」

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心N
わたしはまた、純の家へと向かう。もっと純の心のうちを知りたくて・・・・。


「あの娘の事、怒ってる?」


「・・・・・・・」


「ぁ、ごめんね、やっと少し、落ち着いてきたところなのに・・・・」


「あはは、私って本当、デリカシーないなぁ」


「・・・・愛の夢を見た」


「え?」


「夢のなかで、愛に叱られた」


「もう一人の私になれたかもしれない娘だったのにって」


「・・・・もっと時間がたった後から出会えばとか、あの時に追いかけていればとか、色々考えた」


「でも、あの時俺は、動くことができなかった、追いかけることも、声をかけることも・・・・なにも、できなかった・・・・」




「俺はまだ、愛が死んだ時の事を忘れられないでいる」


「それは、わたしだってそうだよ・・・・思い出すと悲しくて、今でも、愛がどこか自然に出てきてくれるような気がして・・・・」


「少し、違うかな・・・・」


「え?」


「悲しさとは違う心のどこかに、ぽっかりと穴が開いた気持ち、その心の傷に黒い霧のような何かがジワリジワリと入ってくる感じ・・・・」


「・・・・うん」


「愛はいない、だけど、俺が愛を愛していた気持ちは確かにそこにある。だから、俺はこうやって生きていられるんだ」


「なのに、最期に俺にぶつけてきた夢の気持ちにも答えてやれず・・・・。あいつがどんな気持ちでいたのか、なんとなくわかるのに、何もできなかった」


「俺も、夢と・・・・あいつと同じで、臆病者なんだ」


「それでも夢は、心の壁を崩して、俺に全てを打ち明けた・・・・なのに、俺はそれにこたえることができなかった・・・・それは、俺の弱さだ」


「だから、俺はあいつの事を責めることはできない」


「・・・・」


「・・・・」


「そっか!、、あはは!それにしても、愛も勝手だなぁ、夢の中とかじゃなくて、直接純の背中を押してくれればよかったのに!」




「・・・・いるんでしょ?愛・・・・いつもあなたの傍に」


「・・・・俺がそう思っているだけかもしれない、、でも、確かに想いは感じるんだ」


「きっと、愛の俺に対する想い・・・・それが、俺が愛がそこにいると感じる気持ちなんだとおもう」


「人は、死んでしまえばそれで終わりだ」


「だからこそ、想いを残す・・・・愛がいた灯(あかし)、俺がいる灯、心が、先生がいる灯・・・・夢が、いた、灯・・・・」


「愛を想う俺の想いがある限り、愛が俺に抱いていた想いがある限り、俺は生きていける」


「・・・・・・辛いね」


「そうでもないさ・・・・本当に辛いのは、夢のような娘だ・・・・」




純N
心が去ってから、俺は独り、夢の事を想う。
結果も、状況も、理由も違ったが、、俺は、夢がそうするしかなかったんだと、わかっていた・・・・。


(俺は、なんとか踏みとどまることができた・・・・。それは、俺の強さだったからか、あのとき、愛と会えたからか・・・・。それは正直、俺自信にもわからない。
ただ、俺を生かしているのは、愛との 約束 があるからだ。
俺が幸せかどうかも、わからないが、、、愛が読みたいと言っていた物語を書いて、なんとかやっている・・・・)


(あの時、夢を追いかけたとして・・・・。なんと言葉をかけてやればよかったのだろうか?
優しい言葉をかけてやればよかったのだろうか・・・?
全てを許すと、まるで神の様に言ってやればよかったのだろうか?
それとも、お前のせいだと、そういえばよかったのだろうか・・・・?

考えて自問自答していると、その渦にのみ込まれそうになる・・・・。
俺は、、助けを求めた一人の少女を、死なせてしまったのだ。
その事実は変わらない、現実とは、物語の様にはいかない。
自分で作った物語の人物たちなら、こうしただろうと、考えるが、現実の自分が同じように考え動けるかと言えば、少なくとも、俺の答えは決まっている)


(なら俺は、嘘を書いているということになる・・・・。それで、愛は喜んでくれるのだろうか・・・・?愛の言っていた、幸せに生きるということを、俺は実践できているだろうか・・・・。俺の話を面白い、楽しい、感動したと言ってくれる人はいるが・・・・。
俺自体は、どこか冷めた様に感じているのも事実だ・・・・。
それは、愛が望んだことなのだろうか・・・・?俺の幸せなのだろうか・・・・?
俺は一体、なんなのだろうか・・・・?その答えを探すために俺は・・・・)


「ふぅ・・・・駄目だな、考え過ぎると思い詰めてしまう・・・・よくは、ないな」


(現実は、残酷で、そして、、冷たい。だが、暖かい人もいて、暖かい幸せもある。
それは確かに、存在する。あの時の俺は、少なくともそれを感じていた。
今の俺は、どうだ?・・・・踏ん切りがつかないまま、なんとか生きているだけだ)


「・・・・だから、俺は、幸せな最期に憧れる」

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心N
叶が訪ねてくる、、最近は私の方が忙しいからって、叶の方から来てくれることが多くなった・・・・。


「夢ちゃんの為に、夢ちゃんの物語はみんなに読んでもらいたいんだ」

叶N
夢ちゃんの書いた物語を本にするために、心は頑張っている、頑張りすぎるくらい・・・でも、脆さも感じた・・・・だからぼくは、言ってはいけないと想い、ずっと黙っていた言葉を口にする。


「それは本当に、心、君の本心かい?」


「え!?」


「あたりまえだよ!なんでそんなこというの!?」


「・・・・ならいいんだ、ただ、心、その娘を助けられなかった罪悪感で動いてるんじゃないかって感じてね」


「罪悪感が、ないわけじゃない」


「でも、だって、だって、あの娘の考えに気が付けないで、死なせちゃって・・・・」


「あの娘、いつもいつも笑顔で!あのとき叶が言ってくれたのに!!そんなことないって思い込んで!!」


「あの娘の気持ちにちっとも向き合わないで!!わたし、わたし!!」


「心!」


「叶はなにも言わなかった!!夢ちゃんが自殺したことを話してもなにも!!」


「本当は、何か言ってほしかったんだよ!!夢ちゃんの気持ち、いまならわかるもの!」


「叱ってほしかった!どうして気が付かなかったんだって!!それでも編集者かって!!」


「純だって、純だって、なんか変だって気が付いてたはずなのに、わたしも純もあの娘の事なにも、できないで!!それでも純はちゃんと気が付いてたのに、わたしはそんなことないって思うばかりで!!」


「心!」


「わかってたのに、わかってたのに、どうして止めてあげられなかったのとか!純の事、そんな風に考えたり、じゃあ、気が付かなかった私はどうなんだって、ずっと、ずっと、っ!!!」


「どうしてわた・・・・んっ!?」

心N
突然、叶が私の唇を奪う・・・・。そして、唇を離してわたしを抱きしめながら耳元で囁く。


「君は、全部わかってるから、だから何も言わなかったんだ・・・」


「あまり、自分を責めたらいけない、そんなの、夢ちゃんだって、望んでない、僕はそう思うよ」

心N
わたしは、しばらく、叶に抱かれながら、泣いて、泣いて、泣いた・・・・。



「えへへ、何年も付き合ってるのに、これが2度目のキスだね」


「はは、そういえば、そうだね」

叶N
心との2度目のキスは、悲しくて、、なのに、優しい、涙の味がした・・・・。

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心N
わたしは何度も何度も訪れた夢ちゃんの家にゆく。
夢ちゃんの家族にわかってもらうために、夢ちゃんの物語を出版させてくれるようにお願いする為に・・・・。

心N
家族は、迷惑そうな顔を浮かべるが、何度もこうして、話を聞いてくれている。
でも、返事はいつも同じ・・・・。


「お願いします、あの娘の想いを消さないでください・・・・」


「夢ちゃんの言葉、物語、遺したいんです・・・・遺したいんです」

心N
家族の人は、なんて勝手なんだ、と思うだろう。
でも、わたしは何度も、何度も夢ちゃんの家族に頭を下げて、お願いをする。

心N
何度訪れても、夢ちゃんの書いた原稿は読んではもらえなかった・・・・。
苦しいから・・・・。苦しいから、辛いから、だから、読めないって言われて・・・。
それでもわたしは、また、お願いをする・・・・。


「夢ちゃんの物語、読んで、あげてください・・・・」

心N
・・・・・・・・そっと、夢ちゃんのお父さんが、その物語の原稿を受け取ってくれる・・・・・。その物語を読んで、夢ちゃんのご両親は、静かに泣く・・・・静かに、静かに。

心N
そのあとで、涙ながらに、夢ちゃんのご両親に、逆に頭を下げられた・・・・。娘の物語をお願いしますと・・・・・・。


「夢ちゃんの物語、これで、本にできるから、、みんなに読んでもらえるよ・・・・」

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心N
純の書いた 壁と闇 と、そして、夢ちゃんが書いた本 心叶う夢 の出版日を一緒にすることにした。
夢ちゃんへの、鎮魂の灯明(ちんこんのとうみょう)になってくれればいい。

心N
心叶う夢、一人の作家と純真な少女の物語・・・・。

心N
二つの本の売れ行き自体は、そんなによくはなかった・・・・。
純の描いた本は、苦しすぎて、悲しすぎて最期まで読めないという感想が届き。
いままでの話と違って、悲しさと後悔が全面にでていて、同じ人が書いたものなの?という感想すらもらった。

夢ちゃんの描いた本は、まるで幻想世界の少女の様な気分になれる、といった感想が届いた。
だけど、別の感想では・・・・現実を忘れられるけど、なんだろう、引っ張られそうで怖いといった、感想もあった・・・・。

心N
それから更に一年の月日が流れた。
わたしと叶は、いまから結婚式を挙げる。


「心、準備はいいかい?」


「うん」


「綺麗だよ、心」


「ふふ、ありがとう、叶も、ビシーッと決まってて、かっこいいよ」


「ご結婚おめでとう、学生時代から、心が叶先生をどう思っていたのか知っていたから、一緒になるだろうと思っていました。
みんな結婚を終点のように言うけれど、本当はそこからが大変なんだろうと思います。
人生はまだ長く、色々な困難や障害があるでしょう、ですが、これからも、陽だまりのように、草花を育ませる、そんな2人であってほしい・・・・。

短いですが、これで挨拶を終わりにしたいと思います」


心N
純が式のスピーチ言う。前にわたしは、夢ちゃんと純の物語を読み比べてみたことがある。
純の話も、夢ちゃんの話も、どこか、似ていた・・・・師弟関係だったからというわけではなく、、二人はきっと、似た者同士だったのだろう。


「心」


「うん」

心N
指輪交換が終わり、私たちは、みんなの前で口づけを交わす。
そして、わたしはブーケを投げる・・・・。
受け取ったのは、編集部の鬼チーフ・・・・すごく厳しいけれど、優しい人だ。
顔を赤らめて、照れている姿を見て私は思った。
きっとあの人にもいろいろな人生があるんだろう。

心N
純 が 夢 のなかで 愛 に言われた言葉・・・・。
もう一人の私・・・・その言葉はきっと、真実だったのだろう。

心N
愛 が見せた 夢 ・・・・。
純はもしかしたら、愛の夢に囚われてしまうかもしれない・・・・。
それでも、純は生き続けるだろう、、愛と、夢ちゃんのために純は書き続けるだろう・・・。


「こんな思いを抱いた時から、私の中で、純は夢ちゃんとなり、夢ちゃんは愛となった」

心N
純は独りで生きて行けるほど、強くはない、でも、生を捨ててしまうほど弱くもなかった・・・・ううん、弱いというには語弊がある、弱いんじゃない、悲しみに苦しみに後悔に押し潰され、そして、それを一緒に支えてくれる人がいなかっただけなんだ。

だから、わたしと叶で、見守っていこう。あなたは独りじゃないって・・・・。


「最後に、二人の本の中の言葉を紹介しておこうと思う」


「わたしとよく似た少女が、最期に書いた物語の言葉で、この物語を閉めようと思う・・・。
彼女はもう、この世のどこにもいないが、わたしとよく似た少女だ。そして、忘れもせぬ彼女とも、どこか似ていた、そんな少女の言葉だ・・・・わたしが、死なせてしまった・・・・一人の、少女の言葉だ・・・・」


「君は独りじゃない・・・・みんながいて、誰かがいて、きっと君を必要としてくれる人がいる・・・・だから、諦めないで、生きることを諦めないで・・・・。
今は立ち止まっているけれど、君はまた、書くことができるようになるから、君はまた、動くことができるから・・・・今のままで終わらないで・・・・私と君との 約束 だよ」


心と夢は純真な思いとなって物語を叶える

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