演者は、一人です。

一人用の劇でござるっす。

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やぁいらっしゃい。

ここは世界の果てのアルケミーショップ。

辿り着くなんて、なかなかだね。

まぁ、よかったら、見て行ってよ。




その耳飾がほしい?・・・ふふ、そうか、お眼が高いというかなんと言うか・・・。

じゃ、その耳飾の物語を聞かせてあげるよ。




彼女は恋をした。

彼女は、一人村外れの家に住み、いい薬を作る。

そんな彼女の元に一人の少女が訪れた。

村長の娘である少女は、体が弱く、どこの医者にも治せぬ病にかかっていた。

彼女は少女の為に、薬を作った。

少女の体は徐々に癒え、病が癒えたあとも少女は彼女の家に訪れ続けた。

少女と彼女は仲睦まじくなっていった。

彼女は、恋をした。

ある時に、少女が彼女に自分で作った耳飾を渡した。

移る色によって、悲しくもあり、煌びやかでもあり、、愛おしくもある。

二人で片方ずつ、その耳飾をつけることにした。

親愛の証にと、少女がくれた耳飾は、彼女の宝物となった。



やがて、流行病でその村は滅びた。

初めに彼女が病に倒れ、薬も作れぬ体となった。

彼女が愛した少女も・・・片方の耳飾を遺し彼女の元から去って逝った。

少女の想いなのか、ただ運がよかったからか・・・彼女だけが、助かった。

初めに病にかかり、そして、ただ一人生き残った彼女は、魔女だと蔑まれた。



それでも、彼女は薬を調合し、尋ね来る人の病を治した。

万人へと向けられていた優しさ・・・。

一人の少女が生み出した彼女の優しさ・・・。

彼女が取り戻したい日々、本当に助けたかった・・・愛しい人。

その為に、彼女は本当の魔女となった。

どれだけ月日が立っても、彼女はいつまでも少女のままの姿・・・。

いつも、同じ耳飾を片方だけつけている。

少女の姿をした、優しい優しい魔女。



だが、魔女はやがて知ることとなる。

愛おしい少女の姿になろうとも・・・。

例えホムンクルスをつくれたとしても・・・。

本当のあの娘はもうどこにもいないのだと・・・。

彼女は永遠を捨てた。

老女の姿となって、横たわる彼女の耳には、片方の耳飾・・・。
もう片方はその手の中にあった・・・。


この耳飾には、二人の乙女の優しさと、そして、愛が詰まっている。



どうかな?

・・・君も、大事な人を失ったんだね。

その耳飾に惹かれた人は、みんなそうだから。

ほら、涙を拭いて・・・。

この耳飾、ほしいのなら、あげるよ。

受け取れないって?

君も、ここに来た人達と同じことを言うんだね。

・・・君の為にここの扉は開けておくよ。

いつでも、来るといい・・・。



・・・ここに来る人は、皆、何かを失った人ばかりだ・・・。

ここにあるものを受け取った人は誰も居ない。

ただ一人を除いては・・・。

ここの扉の鍵を受け取った・・・私を除いては、ね・・・。

ここは世界の果て、時の狭間に取り残された場所・・・。

ふふ、次は、誰が来るのだろう・・・私は永遠に、次の鍵を受け取る人が来るまで、ここで待ち続けるよ。

誰かの苦しみと悲しみを、聞いてあげられる、そんな人が来るまで、ね。

そこでここを見ている 君 ・・・。

ここの鍵は、一つじゃない・・・この意味、わかるかな?

じゃ、今日は店じまい、また、会うときまで・・・さようなら。
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