タイトル 〜競馬実況〜

//////登場人物//////

レース実況
冨野武昭(とみの たけあき)♂
抑揚があまりなく、競馬ファンからは聞きやすい実況ともいわれるが、同時につまらないとも言われることがある。その実、競走馬に区別せず、勝ち馬だけに限らず、負けた馬全ての名称を最後の直線で必ず発表する。

牝馬限定芝レース

レース実況
姫野優香(ひめの ゆうか)♀
高校生アイドル、競馬が好き。アイドルなのに少し暗めというか物静かだが、芯が強い。

最終芝レース

パドック実況
水島わたる(みずしま わたる)♂
実況は聞きやすく、ハルカゼの凱旋門賞での実況も担当し、「父の夢、騎手の夢、仲間たちの想いを乗せて!秋の日に春の風を告げました!日本初の凱旋門賞馬誕生です!!」などの様々な名言を残しているベテラン。

レース実況
浅間時雨(あさま しぐれ)♂
フリーの競馬ライター。ハルカゼの父セイマブライアンの凱旋門賞出走の馬券をお守りとしてもっている。ザンマのオーナーでもあり、ややロマンチスト。
フリーライターとしてもそこそこ有名になり、ハルカゼの記事を書いたことから、ドリームレースのアナウンサーをやってみないかということになり、引き受ける。

/////////

冨野武昭 ♂
水島わたる ♂
浅間時雨 ♂
姫野優香 ♀

/////////

////実況席////

水島わたる
「遂に今年も始まります、ドリームレース定春記念!実況はわたくし水島わたると冨野武昭、そして今年の牝馬(ひんば)限定戦、最終レースの実況は、ゲストである競馬ライターの浅間時雨さん、そして、現役高校生アイドルの姫野優香さんに進めていただきます」

冨野武昭
浅間時雨
姫野優香
「よろしくおねがいします」

水島わたる
「レース開始までにはまだ、時間もありますし、ゲストである時雨さんと優香さんの紹介や身の上話からいってみましょうか、では、時雨さんからおねがいします」

浅間時雨
「っと、ぼくからかぁ、身の上話は、競馬のフリーライターをしながら、細々とくらしてます」

水島わたる
「時雨さんの記事といえば、凱旋門賞でのハルカゼの記事もそうでしたよね。それの縁でここでこうして、実況をお願いすることになったわけですが」

浅間時雨
「そうですねぇ〜、まぁ、気分のままに書いてみましたね。元々、ハルカゼの父親が好きで、追っかけみたいなことをしてたんで、その子が走るとなると、やっぱり見るしかないなって」

水島わたる
「時雨さんといえば、今回出走する、ザンマのオーナーでもありますよね、レースが楽しみじゃないですか?」

浅間時雨
「ですねぇ、まぁ、結果も大事ですが、あまり無理はしないで自分なりの走りをしてほしいなと思ってます」

水島わたる
「なるほど、わかりました。では、次は優香さん、おねがいします」

姫野優香
「はい、わかりました」

水島わたる
「優香さんは、高校生アイドルとのことですが、自分で応募などをしたんですか?」

姫野優香
「あ、いえ、その、、友達が・・・・」

水島わたる
「友達ですか」

姫野優香
「そうなんです。オーディションに友達が勝手に応募しちゃって・・・・。受かるはずないなって思っていたのに、書類選考で通っちゃって、、それで・・・・」

水島わたる
「なるほど、それでアイドルに選ばれたと、アイドル生活に慣れるまで、大変でしたでしょう?」

姫野優香
「ええ、そうなんです、、大変でした。いまでも、わたしなんかでいいのかな、なんて、考えちゃいます」

水島わたる
「特に大変だなって思うことはなにかありますか?」

姫野優香
「そうですね・・・・。私情を持ちこんじゃうところでしょうか・・・・」

水島わたる
「というと?」

姫野優香
「プライベートの時とかに嫌なことがあったとしても、番組とか録るときとかは、みんなそんなことなかったかのように振る舞うんです。でも、わたしは結構気にしちゃって、顔に出ちゃったりして、、だから他の人はすごいなって思います」

水島わたる
「ああ〜、なるほど、確かにモチベーション維持はきつそうですよね」

姫野優香
「はい、いまでもうまく、できなくて・・・・」

水島わたる
「なるほど、、あっといけない、私の方もつい悪い癖が・・・・」

姫野優香
「あの、どうかしたんですか?」

水島わたる
「いえいえ、実はレースの合間のこういうやり取りは、井戸端会議みたいな感じで和気藹々(わきあいあい)とやってほしいと言われていたんですよ」

浅間時雨
「おっと、となると、ぼくたちもしゃべっていいのかな?」

水島わたる
「ええ、どうぞどうぞ、いやいや、仕切りたがり屋の悪い癖が出てしまって、いけませんね」

水島わたる
「っと、そうこう言っている間にも、そろそろ第一レースの出走が近づいてきたところで、ここでみなさんの好きな馬や想い出の馬なんかも、話の中でちらほらと出ていますが、もう一度聞いておきたいですね」

浅間時雨
「ぼくは断然、ハルカゼの父親のセイマブライアンだね〜」

冨野武昭
「わたしは、ツインターボですね、あの大逃げが好きで」

水島わたる
「となると、サイレンススズカはどうでしたか?」

冨野武昭
「ええ、逃げ馬全般が好きなのでよかったですね」

浅間時雨
「優香ちゃんは?好きな馬とかいるのかな?」

姫野優香
「わたしは、実はまだ、いないんです」

水島わたる
「なるほど、いつか好きな馬ができると良いですね」

冨野武昭
「わたるさんの好きな馬はなんですか?」

水島わたる
「わたしは、グリーングラスですね。テンポイント、トウショウボーイ、グリーングラスのTTGといわれた3頭の名馬の内の一頭なのですが・・・・と、話の途中ですがレースの時間が近づいてきたようなので、ここで一旦区切りたいと思います」

水島わたる
「次の合間での実況席内輪話では、こんな風に和気藹々といきましょう!それでは、第1レースダート戦2200M、まずはパドックから・・・・」

////ダートレースパドック後////

水島わたる
「ゼノンはいまだ、無敗のままですね、ゼロとの初対決ですが、ほかの馬ともどもどうなるのか楽しみですね」

冨野武昭
「ええ、楽しみですよね。ザンマとの対決も来年決定しているそうですし」

水島わたる
「ゼロもまだ若いですが、ダート戦で連を外したことがありませんね」

冨野武昭
「そうですね、ゼロもゼノンも逃げ馬ですので、レース開始から激しい先行争いになるでしょうね」

水島わたる
「見ものですね」

冨野武昭
「ええそうですね。他の馬も負けず劣らず、強い馬がそろっていますからね、楽しみです」

水島わたる
「そのとおりですね。さ、それでは、枠入りになりました。レース実況は冨野武昭さんでお送りいたします」

//////ダートレース実況///////

冨野武昭
「出走馬は、ゼノン、マビノギオン、フェルエラ、エルダーオブダークネス、ゼロ、ヴァンデット、アルドレ、ブラックオプス、ディープフィアー」

冨野武昭
「以上の9頭でおこなわれます、枠入りが完了しまして・・・」

冨野武昭
「スタートしました。さぁ、先行争い、予想通りゼノンがハナを奪いに行きます、追いかける様にゼロがかぶせていきました」

冨野武昭
「3番手は少し離されて、フェルエラ、そのあとにアルドレ、それを覗うようにヴァンデット、ディープフィアー、エルダーオブダークネスが続きます。そのあとにマビノギオン、最後方にブラックオプス」

冨野武昭
「・・・・さぁ、ゼノンとゼロの激しい先頭争いが続いております。3番手はかわりましてアルドレ、それに続きましてフェルエラ、そのあとは変わらずヴァンデット、ディープフィアー、エルダーオブダークネス、少し離れてマビノギオン、最後にブラックオプスと続いております」

冨野武昭
「ゼノンとゼロがハナを奪い合ったまま第3コーナーを廻りまして、直線へと続く最終コーナーへと向かってゆきます」

冨野武昭
「さぁ、標識を通過いたしまして、ゼノンとゼロが相変わらず後続をやや離したまま、4コーナーにさしかかるというところ、後ろの後続が徐々に差を詰めにかか・・・・っと、どうしたことだ、ゼロがズルズル後退、騎手が手綱を絞っております、ゼロ故障発生!なんということだ!ゼノンの鞍上(あんじょう)がちらりと後ろを振り返りましたがすぐにまた前に向き直ります」

冨野武昭
「ゼロは最終コーナー手前で故障発生、競争を中止しております。ゼノン先頭のまま、最終コーナーを回りまして直線へ、後続も足を伸ばしてくる」

冨野武昭
「長い直線ですが、先頭は依然としてゼノン、後続が追い上げようと必死ですが、差がつまらない、ゼノン、さらに足を延ばす、後続は置いて行かれております、ゼノンいま一着でゴールイン、圧勝です!・・・・二着には良い足で追い込んできた、ヴァンデッド、それに続きまして、3着にはエルダーオブダークネス、以下、マビノギオン、アルドレ、ディープフィアー、ブラックオプス、フェルエラと並ぶようにしてゴールしました、4着以下は混戦です」

///////////////実況席///////////////////////////

水島わたる
「・・・・一戦目から大変なことになりましたね、武昭さん」

冨野武昭
「そうですね」

姫野優香
「あ、あの、、ゼロは大丈夫なんでしょうか?」

浅間時雨
「心配だね・・・・」

水島わたる
「そうですね、競争を中止しているので、何事もないということはないでしょうが・・・大事が無ければいいですよね」

冨野武昭
「いま検査中でしょうから、後々報告がくると思いますよ」

姫野優香
「・・・・心配です」

浅間時雨
「・・・・・・」

姫野優香
「・・・・・・」

水島わたる
「いやぁ〜それにしても、ゼノンは強かったですね」

冨野武昭
「そうですね、いまだ無敗のままですから」

姫野優香
「んっ・・・ほかのみんなも強かったと思いますけれど、すごかったですね」

浅間時雨
「そうだね、誰かが無敗記録を破ることができるのか、このまま無敗街道を突き進むのか楽しみだね」

姫野優香
「時雨さんの馬も、今回出走しますけれど、その・・・・何事もなかったら、来年のフェブラリーステークスでゼノンとの対決がまっているんですよね・・・・」

浅間時雨
「うん、そうだね、けどあの馬は強いよ、ぼくの馬も負けてはいないと思うけれど、正直勝てるかどうかはやってみないとわからないかな」

水島わたる
「そうですね、競馬は何が起こるかわかりませんから・・・・っと、ゼロの検査結果が出たようです。武昭さん、お願いします」

冨野武昭
「わかりました・・・・・・」

冨野武昭
「・・・・・・」

姫野優香
「ど、どうなんですか?」

冨野武昭
「ねん挫みたいですね」

姫野優香
「ねん挫・・・・それなら、競争能力とかに影響はないんですよね!?」

浅間時雨
「うん、ねん挫なら、数週間で治るはずだよ」

姫野優香
「よかった・・・・」

水島わたる
「大事になるような怪我ではなくて、安心しましたね」

冨野武昭
「そうですね、本当に良かったと思います」

姫野優香
「次のレースの実況は、わたしだから、、その、ちょっとドキドキしてました。もしゼロが本当に大変なことになってたらって、ちゃんと実況できなさそうで・・・・」

浅間時雨
「うん、ぼくも最終レースの実況だけれど、同じ気持ちだったよ、何事もないとはいえないけれど、不幸中の幸いで本当によかったと思うね」

水島わたる
「そうですよね、お二人はこういった実況は初めてでしょうから、なおさら緊張しますよね」

姫野優香
「すごく、ドキドキしてます」

浅間時雨
「ぼくも、少し緊張してるかな」

冨野武昭
「そういっている間に、次のレースの時間が近づいてきましたね」

浅間時雨
「ちょっと失敗しても大丈夫だって、自分のペースで行こう」

姫野優香
「そうですね・・・・・・。すぅ、はぁ〜・・・・(深呼吸)」

冨野武昭
「失敗したら、観客とかから、ちょっと怒られるだろうけど・・・・」

姫野優香
「も、もう!武昭さん、脅かさないでください・・・・」

冨野武昭
「あ、いや、そのくらいだから、そんなに緊張しないでいいよって、意味だったんだけど・・・・」

姫野優香
「もう!しりません!・・・・なんて、嘘です、ごめんなさい」

冨野武昭
「なんだ、嘘か、ちょっと本気にしてしまったよ」

浅間時雨
「優香ちゃんも大人を困らせるなんて、なかなかだね〜」

姫野優香
「ごめんなさい、すっごく緊張してて・・・・」

水島わたる
「ははは、っと、遂にレースの時間になりましたね、それでは、パドックから・・・・・・」

////牝馬限定レース////

水島わたる
「さぁ、まもなく出走となります。牝馬限定戦、美しい女たちの走りの比べあいが行われようとしてます。実況は姫野優香さんでお送りいたします。それでは、よろしくお願いします」

姫野優香
「んっ、はい、がんばります」

姫野優香
「・・・・レース前に、もう一度出走馬名を読み上げたいと思います」

姫野優香
「ラビリンス、アベルラ、エンシェントハート、リリエンタール、アズサノアトリエ、エンドレスワルツ、イリス、アリスガワ、アマリリス、ノワール。以上の10頭でレースが行われます」

姫野優香
「みんながゲートに向かいます・・・・。リリエンタールが少しゲート入りを嫌がっているようです・・・・いま、おさまりました」

姫野優香
「・・・・スタートしました!ノワールが少し遅れたように見えましたが、ほかのみんなは綺麗なスタートです」

姫野優香
「アリスガワが先頭にいきました、リリエンタール、その後ろに、アズサノアトリエ、エンドレスワルツ、少しだけ離れて、エンシェントハート、イリス、アマリリス、その後ろにアベルラ、ラビリンス、一番最後にノワールと続いています」

姫野優香
「・・・・先頭はここでリリエンタールに変わりました。その後ろにアリスガワ、少しだけ離れてアズサノアトリエ、エンドレスワルツ、イリス、エンシェントハート、アベルラ、アマリリス、ラビリンスと続いて、最後は変わらないままノワールです」

姫野優香
「もうすぐ最終コーナーに入るところで、リリエンタールとアリスガワが並びました。後ろの馬も、少しずつ差を詰めていきました」

姫野優香
「直線に入りまして、リリエンタールが先頭です、アリスガワがそれに続きます、アズサノアトリエ、エンドレスワルツも追い込んできました!イリス、アベルラ、アマリリス、ラビリンスもそれに続きます!」

姫野優香
「リリエンタールとアリスガワを交わして、ここで、アマリリスが先頭に立ちました!他のこは、足が止まりました!アマリリスが先頭です・・・・あっ!最後方からすごい足でノワールが追いこんできましたっ!」

姫野優香
「アマリリス先頭ですが!ノワールが抜き返します!アマリリスも頑張ります!アマリリスがまた抜き返しました!ノワールもまた抜き返そうとします!っ!あ!その二人に割って入ってくるように一頭、足を延ばしてきました!黒い馬、このこは・・っ・・エンシェントハートです!3頭並んだままゴールイン!」

姫野優香
「はぁはぁ、っん・・・・勝った馬は、まだわかりません。写真判定となるようです、すこしお待ちください」

////実況席////

姫野優香
「はぁ・・・・。緊張しました・・・・うまくいったでしょうか?すごく焦っちゃったように思います・・・・」

水島わたる
「いやぁ、大激戦でしたね。実況の方は特に問題はなかったと思いますよ」

浅間時雨
「うんうん、よかったと思うよ」

冨野武昭
「ですね、概ね問題ないでしたね」

姫野優香
「なら、よかったです」

水島わたる
「ここで写真判定の結果がでました。ハナ差でアマリリスの勝利となりました。二着にノワール、3着エンシェントハートとなっております」

姫野優香
「ノワールもエンシェントハートも頑張りましたよね、他の馬たちも怪我とかなくてよかったです」

冨野武昭
「今回2着になったノワールの血統には、ナリタブライアンが入ってますね」

水島わたる
「そうですね、ナリタブライアンの直系の子はあまり活躍できませんでしたが、こうやって、血統が紡がれてやがて活躍する馬が出てくるのは、感慨深い(かんがいぶかい)ものがありますね」

姫野優香
「平成の三冠馬とか、シャドーロールの怪物と呼ばれたりして、すごく、強かったんですよね」

冨野武昭
「そうだね、同じ三冠馬のディープインパクトやオルフェーヴル、古いところだとシンボリルドルフとかと最強馬論争がされたこともあったね」

浅間時雨
「ぼくの馬、ザンマにもナリタブライアンの血が入っているけど、ハルカゼの父親セイマブライアンの血統にも名前からわかるとおり、ナリタブライアンの血が入っているんだよね」

水島わたる
「競馬は、ブラッドレースともいいますからね、そうやって、子孫を育んで、その子が活躍をしてゆく、いいものですよね」

姫野優香
「なんだかロマンチックですね」

冨野武昭
「でも、その裏では、光を浴びることなく消えてゆく馬もいる」

姫野優香
「そう、ですよね・・・・悲しいですけれど、そうなんですよね」

冨野武昭
「一度きりしかレースにでられない馬もいれば、レースにすら出られない馬もいる、それも競馬の現実だし、馬だけでなく、人にも様々な物語がある」

姫野優香
「・・・・わたし、一度、ウインズの窓口をしたことがあるんです」

水島わたる
「そうなんですか?それもアイドルのお仕事ですか?」

姫野優香
「ええ、少し無理言って、一日だけでしたけれど、地方のレース場で・・・・・。いまは精算とかも全部機械ですけれど、そのときは昔と同じように、私の所だけですけど窓口で購入をできるようにしたんです」

浅間時雨
「窓口で購入かぁ、なんだか懐かしい感じだね」

姫野優香
「・・・・そのとき馬券を買いに来たひと、神頼み みたいなことをしてました、人生をかけてるなって感じて・・・・機械じゃなくて、人から直接馬券を買ったら、当たりそうな気がするって言ってました」

姫野優香
「お金だけじゃなくて、もっと大事なものも抱えてるんだなって考えたら、馬券を渡すときに手が震えちゃって・・・・」

浅間時雨
「競馬は、ただのギャンブルじゃない、、か・・・・」

水島わたる
「そうですね、、時雨さんにもやっぱり、そういったドラマはおありですか?」

浅間時雨
「あはは、まぁ、それなりに、かな。そういえば、ロマンといえば、セイマブライアンの凱旋門賞の馬券をお守りになんてしてたりなんかしてるんだよね」

姫野優香
「ふふ、いいですね、そういうの、わたしも本当に好きな馬ができたら、お守りにしたいな」

水島わたる
「競馬にはロマンがありますよね。それでは、まもなく最終レース、芝2400Mが開始されます。日本初の凱旋門賞馬、ハルカゼが出走いたします」

水島わたる
「このレースでは、パドック入場からそのまま本馬場入場へと移っていきます・・・さぁでは、パドック実況へと参ります!」

////芝 パドック〜本馬場入場 実況////

水島わたる
「少女の家族が思い描いた夢は、競走馬としてではなかったのかもしれない・・・・、だけれど・・・・。
この馬は、ここまで来た・・・・今はもう、馬と少女だけの二人だけの家族・・・・少女と馬は二人でここにたどり着いた・・・・だが少女達は決して二人ぼっちではない!!眼を閉じれば見える!
見守り続ける家族達の姿が!灯火となりて、全てを明るく照らせ!そしてみなの未来も!!
ヘルアンドセブン!七つの灯火!」

水島わたる
「一人の男の言葉から、いくつもの物語が始まりました・・・・そして、記憶にも新しい、、あの伝説の馬の物語も・・・・次の夢、次の想い、、繋がり続け途絶えることの無い愛と、そして、夢と熱い熱い戦士たちの絆を!この馬にも垣間見ることができます!!届け届けこの想い!どこまでも!!風となって駆け抜けろ!!トキカゼ!」

水島わたる
「その体にはハルカゼの父セイマブライアンとの伝説のレースを制した、欧州三冠馬、ヴァルファウエルの熱き想いとエターナルオブハートに唯一勝つことの出来た馬、フェルエレスの血が流れております!そして、幾度となくハルカゼと激戦を繰り広げたライバル!!女だからと甘く見る者などいない!!今日もターフに咲き誇れ!フェルアクア!金色纏いし戦乙女!」

水島わたる
「やってきたのは誰もが知るあの世界最強馬、エターナルオブハートの跡継ぎと言われておりますこの馬!真っ白な馬体を歓声が迎えます!蒼き瞳が深紅に染まるとき、その瞳が見据えるは、ここに集いしすべての想い!聖なる風となりて、聖なる炎となりて全てを見据え、全ての背を駆け抜けろ!シルフレインです!」

水島わたる
「生みの親はもういない、だが共に戦う戦友達がいる!地方から世界へ羽ばたいた伝説!
その体に流れるのは脈々と受け継がれて来た三冠の血筋!シンザン、ミスターシービー、シンボリルドルフ、そして、、ナリタブライアン!その血に目覚めた今、夢の続きを追い続けよう!地方の、、いえ世界の英雄、ザンマ!」

水島わたる
「友人達と語り明かした夜・・・・まだ若かった頃・・・・戦争で全てを失い、やがてたどり着いたのがここだった・・・・友と語り明かした話は、競走馬の話・・・・その勇士空に届け・・・・その勇士!誇りとなれ!死すら断ち切れえなかったその絆!バルカンドアレグロ!!絆の結晶!!」

水島わたる
「さぁ、大きな声援に迎え入れられて現れました、ハルカゼです!
父の、そして、みんなが追い求めた夢と幾つもの想いを背負い、遂にそれを叶えました。
そしてこれが最後のレースだ!同じ重さのぶつかり合い、同じ想いの比べ追い、さぁ、語り明かそう!凱旋門の伝説を!先日旅立った偉大なる父!その夢を叶えた自分自身の神話を!ハルカゼ!日本初の凱旋門賞馬!」

水島わたる
「この馬の牧場は、今はもう無い・・・・この馬がデビューを果たす前に倒産し、牧場の関係者はすべて自殺した・・・・たった一人、残された馬主だけを除いて、さぁ、土産話に暗い話などいらない!
幾多の勇士が集うこの場所で、比べた想いのその絆を話そう、その重みを話そう!いつかたどり着くそのときの為に!アナザーヘブン!」

水島わたる
「死を司ると言われる天使の名を冠したその名を、悪く言われることもあったでしょう!
軽い軽いその言葉、その言動、だが!彼らにもまた物語があります!!
先に逝った学友たちに・・・・若くして不慮の事故によりこの世を去った友たちに!死を司る天使の別名を、その意味を!ここで聞かせよう!!決して見せ掛けだけではない!!
その内に秘めた想いを!言葉を!そしてその真実を!!アズラエル!!全ての魂を優しく包む天使!!」

水島わたる
「ずっと一頭の馬を追い続けていました、その馬は大成する前にこの世を去りました。
ずっと追い続けてきたライバル、現実からいなくなってからもずっと・・・・。
やがて、彼を超えたことを知った・・・・。
サニーからスズカへ、スズカからエルへ!これはわたしの憶測ですが彼も彼らと同じように強い者の背中を追って伝説になったのでしょう!!
さぁ!今度は己の背中を次の世代に見せ付けるのだ!!後に続く者に見せ付けろ!!フェリックス!!」

水島わたる
「オーナーの所有馬はこの馬ただ一頭のみ。
始めは勝てなかった、いつまで立っても駄馬扱いだった・・・・。
あるとき絶望的に強い奴が現れた。
何度も同じレースにでた、勝てることはなかった・・・・。
あいつは故障をした。それまでの強さが嘘のように成りを潜めた・・・・。
どこか、ほっとした、嬉しかった、ざまぁ見ろと思った。
なのに、この寂しさはなんだろう?この虚しさは、なんだろう、この空虚な気持ちはなんなのだろう・・・・。
俺が休養中に、あいつは死んだ・・・。
何故か、涙が出てきた・・・・。
そうだ、俺はあいつを見ているのが、あの絶望的な強さを、そいつと同じレースに出ることが楽しかったのだ・・・・。
気が付けば、同じラインにいる、横を向けばあいつと同じような奴らがいる、競い合うやつらがいる。あの時の嫌な思いは風に流そう・・・・。
あいつと同じ様にすがすがしい気持ちで俺の走りをしよう、俺はその瞬間のために生き続ける!駆け抜ける!傷だらけの栄光!アヴァロン!」

水島わたる
「最終レース2400M芝 以上の11頭でおこなわれます。パドック実況はわたくし水島わたるがお送りいたしました」

水島わたる
「レース実況は変わりまして、浅間時雨さんとなります。では、時雨さんよろしくお願いします」

浅間時雨
「わかりました」

浅間時雨
「ファンファーレが鳴り終わりまして、まもなく最終レース芝2400Mが始まろうとしています」

浅間時雨
「枠入りは順調です。フェリックス、アズラエルと入りまして、全馬枠入りが完了しました」

浅間時雨
「スタートしました!全馬そろった綺麗なスタートです」

浅間時雨
「フェリックスが先手を打ちました、トキカゼがそれに続きます。そのあとにアナザーヘブン、ヘルアンドセブン先行勢はこのあたり、少し離れまして、ハルカゼはここにいました、中団やや先行といった形。ハルカゼをマークするように、フェルアクア、そして同じくシルフレインです。その後ろにザンマ、アズラエルと並ぶように続きまして、ここまでが中団勢といったところでしょうか、最後方にはバルカンドアレグロとアヴァロンが前を見る様に足を進めていきます」

浅間時雨
「いま1000Mの標識を通過いたしました。先頭はトキカゼとフェリックスが何度か互いに入れ替わる様にしながら後続をリードしていきます。そのあとは変わりましてヘルアンドセブンが前に出ましたその後にアナザーヘブン、ハルカゼの位置取りは変わらず中団やや手前です。フェルアクアとシルフレインもそれを見る形で進んでいきまして、その後ろはアズラエル、ザンマと変わりました。バルカンドアレグロがやや前にいきまして、最後方にアヴァロンとなっております」

浅間時雨
「トキカゼとフェリックスが前を行く中、追い上げる様にヘルアンドセブン、アナザーヘブンが上がってまいりました。
さぁ、まもなく最終コーナーに差し掛かるというところでハルカゼに跨る鞍上の手が動きました!それにこたえる様にハルカゼが上がってまいりました!つられる様にして、フェルアクアも上がっていきます!ザンマたち後続勢がすぐ後ろまで迫っていますがシルフレインはまだ動かない!最後方にはポツンとアヴァロンただ一頭!己の末脚を信じて直線一気にかける模様です!」

浅間時雨
「ハルカゼグングンと先頭集団に襲い掛かります!!シルフレインの鞍上の手が動きました!それに勝るとも劣らないスピードで追い上げていきます!
蒼き瞳が真っ赤に燃えております!!風を斬る音がこちらまで聞こえてくるようです!ザンマ、バルカンドアレグロもそれに食らいつく!!
最終コーナーを回りまして直線に入りました!既に先頭のトキカゼに追いつく勢い!ハルカゼおおまくりです!!
だが、あなただけにいい恰好はさせないと!フェルアクアが競りかかります!父譲りの金色の馬体が煌めきを放つ!!
アズラエルも悲しみを力に変えて!!馬体を弾ませて!!蹄鉄の音を響かせて上がってきました!!
場内からどよめきが巻き起こります!!これは!アヴァロンだ!最後方から爆発するようにアヴァロン!!納められた聖剣を解き放った!素晴らしい切れ味!!」

浅間時雨
「残り100M!!ここでハルカゼが先頭に踊りでる!!だがしかし!トキカゼ、フェリックスたち先行勢もここでは終わらない!!アナザーヘブンもヘルアンドセブンも下がりません!追い上げようと前へ前へと突き進みます!!フェルアクアも先頭に並んできた!!シルフレインが、ザンマがバルカンドアレグロがこれに続く!!!アヴァロンの切れ味も衰えない!先頭に襲い掛かる!!」

浅間時雨
「全馬横一線に並んでゴールしました!!どの馬が一着なのか、ここからではまったくわかりません!」

浅間時雨
「ハルカゼが引退レースを制したのか!?それとも、他の馬がそれに花を添えることとなるのか!勝敗は写真判定に持ち込まれます!」

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