タイトル「霊刀 空蝉」

登場キャラクター
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♂4 ♀1 不問1

語りべ 不問 キャラ名「」がないものは全て読んでくださいませ。

相変わらずの無双です。女性演者とかと二人で分けてもOKOKです。

平蔵 ♂
厳太 ♂

お上&代官 ♂
家来&村人 ♂

麗華&謙信&娘 ♀
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想い出シリーズという、オリジナルの話での一振りの刀にまつわる話、これは、その物語にでてくるキャラクター、霧月麗華(きりつき れいか)という少女がもっている、一振りの刀の話・・・・。
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本編

麗華が父からもらった、霊力が宿った刀・・・・霊力の無い麗華が親友の結を護るために助けるために戦う術を得たいと父に言った後で、父であるレオンが麗華に渡したこの刀は、一見すると地味であり美しい刀とは言いがたいが、何故だろうか・・・・どこか惹かれる不思議な魅力を持つ刀。

その刀の銘は 空蝉(うつせみ) と言う。

地味であり美貌もあまり無いながらも、遊びで屋敷に忍び込んできた源氏と出会い、一度はその体を重ね合わせたが、その後は源氏からの求愛を拒絶し、二度と会わなかった女性の名前から取られている。

最初こそ、その地味な容姿から源氏は馬鹿にしていたが、、その振る舞いと気品のある姿をみて敬愛へとかわったという。 だが何度会おうとしても逃げられてしまう、、、、夜這いを仕掛けたものの、それを察知されて逃げられ、その布団には着物だけが残されていた。

源氏はこれを見て、、空蝉(うつせみ)、蝉の抜け殻かよ・・・・と思ったからか、以後、歌を書くときにはその女性のことを空蝉の君、と呼んだという。

彼女は源氏が忍び込んだ家の後妻であり、一度は裏切ってしまった夫へのせめてもの償いだったのか、源氏からの求愛を受けることはその後一切無かった、後々、夫が死ぬと未亡人となり、尼となったあと、源氏によって寺へと招かれた。

この刀の鍛冶師の名は、村柾(ムラマサ)
呪われた刀、恨みをはらす妖刀といわれている、あの名刀。
この空蝉と呼ばれる刀には、悲しい物語がある。
とある小さな村から、この刀の物語は始まった。

その村では飢饉が起こり、村人は生きるか死ぬかという事態に落ちっていたにもかかわらず 年貢を納めろとお上から通達を受けていた・・・・。

一人の男は、黙っていても死ぬだけだ、戦おう!といいだし
もう一人は、話せばわかるはずだ、とその男に告げると、お上の下へと事情を話しにいった。
だが、その男の言い分は通じず、お上から追い出され、村へと泣く泣く戻ってきた。
本来ならば殺されていたが、一人の家来がお上を制したため、無事に帰ってこられたということを、まっていた村人にその男は話した。

体格のいい男、名は、厳汰(げんた)は言う。

厳太
「だから言っただろう!言うだけ無駄だ!戦うしかないんだ!」

厳太
「お前がいうから、ここまで我慢してきた!!もう我慢の限界だ!!」

そういう男に、、かえってきた男、平蔵(へいぞう)は呟く。

平蔵
「だが、それでは何の解決にもならない・・・・」

親友の言葉に呆れたようなため息をつき、座り込む・・・・。

そして、意を決したように、床をにらんだまま、静かに呟く・・・・。

厳太
「・・・・娘が、今朝死んだ・・・・」

その言葉にみなはぎょっとして、男を見る・・・・ただ一人、その男の親友であるお上に直訴しに言った平蔵だけが、、静かに男を見つめていた・・・・・・・。

暫しの沈黙の後、、一人の男がスッと立ち上がる。
それに続くように、幾人かの男たちも、、立ち上がり、それぞれの家に行くと・・・・。
米びつをもって戻ってきた・・・・。

村人
「隠していた、米だ・・・・これを、渡していれば、、娘さんは、、すまん」

口々に謝罪の言葉をいう男達に厳太は言う。

厳太
「いや、、これだけあっても数日しかもたん、、なによりも、、うちの娘の体は、もう、食べ物を受け付けられないくらいに、弱っていたんだ・・・・」

男は体格がよくそれなりに体力もあった、、というのも、木々の皮からなにからなにまでを食べ、挙句には餓死した村人の肉すらも食っていたからだ・・・・。
その男が自分の娘に・・・肉を食わせようと、焼いた肉を持っていったときのことを話す・・・・。

その場には、、親友の男もいた・・・・理由といえば、厳太は、娘にこれが人の肉でしょう?
と聞かれたら、、、違う、とはいえない、だから、食わせるために、嘘をついてほしい、言い訳をしてほしいと、頼まれたからだ。

でも、娘には通じなかった・・・・。


「二人とも、うそつき・・・・でも、ありがとう」

それが娘の最期の言葉だった・・・・親友の娘の言葉を聞いて、お上に直訴(じきそ)しにいくことを決めた。

その、お上の所から戻ってきた、平蔵がポツリと漏らすように言う・・・・。

平蔵
「はは、それにしても、、みんなの米を集めても、もうこれだけしかないのか」

だれともなく平蔵がいった言葉に、あたりはシーンと静まり帰った・・・。

平蔵
「やるしか、、ないか・・・・・・」

そう呟いたときに、戸がガラリとあけられる。

一人の家来を連れた、お上の遣いである、代官が来たのだ。

代官
「話は聞いたぞ・・・・一揆を起こすつもりか!!」

ギロリと村人の瞳が見据える中・・・・その男は言い放った。

だが・・・・・・・村人の目をみたその代官はたじろいだ・・・・。

戦場で見る目と似てはいるが違う、、戦場の兵士や武士達には、、希望がある・・・・だが・・・ここの村人たちには・・・・それがない・・・・。
これが、生を諦め尚も戦うことを決めた者の目か・・・・。

そこに現れた男は、、直訴しに行った平蔵の命を助けてくれた男だった・・・・。

代官
「・・・・・・・みんな、死ぬぞ」

平蔵
「黙っていても死ぬさ・・・ここに来る間も目新しい墓をみただろう・・・・」

見覚えのある男が言った言葉に、無言で頷き・・・・。

代官
「だが、わしはお上の、上様の使いだ・・・・お前たちを見す見す放っておく事はできぬ」

その言葉に、村人達がジリっと動く。

代官
「しかし、、この数、多勢に無勢・・・・勝ち目は無いだろう」

代官
「なにより、お前たちの苦しみもわかる」

家来が男に言う。

家来
「代官さま、、どうするので・・・・?」

聞かれた男は腰の刀を抜くと、家来の者に手渡した。

代官
「腹を切る・・・・介錯してくれ」

家来
「な、なんですと!?」

無論の事、家来は驚いて声をあげる。

代官
「上様に、逆らうことはできぬ・・・・村人の力にもなれぬ・・・・」

代官
「このまま黙って帰すつもりも、毛頭あるまい・・・・」

代官
「こうなったのも、自らのせいでもある・・・・ならばせめて、腹を切って、上様とここの村人に詫びるしかあるまい・・・・」

代官
「なぁ・・・・わしは、、本当ならば、ここにいる者たちの為に・・・・いや、、いい」

そういって、その場に座り込み、何の迷いも無く、村人の目の前でその男は、腹を切った・・・。

介錯を迷う家来に向かって・・・・。

代官
「介錯は、どうした?」

と呟き・・・・家来が意を決して刀を振りかざしたそのときに、、

代官
「武士とは・・・・悲しい生き物よの・・・・」

男は、そういった、、、首が落とされ・・・・家来の男が言う。

家来
「おれのことはどうする?殺すのか?」

村人の一人である、厳太が言う。

厳太
「・・・・いや、、、殺さない、代わりに、その人を手厚く葬ってほしい・・・・」

家来
「・・・・・・・」

無言で家来の男は、介錯に使った刀を村人の男に渡す。

家来
「その刀は、村柾という刀だ、恨みをはらす刀、などと呼ばれている・・・・」

家来
「この方は、本音ではお前たちの方に付きたかったのだろう、、だが、家柄もあり誇りもあり、上様に対しての面目もある・・・・わかってほしい」

家来
「武器はほしいだろうから、、俺の刀もくれてやりたいが・・はは・・・・」

そういいながら、抜いた男の刀は、竹光だった・・・・。

家来
「俺の家は断絶しているから、多少の無理はきく、武器を求めた農民に刀は奪われたと話しておく」

家来
「この人の家族にだけは、、正直に話しておくが・・・・」

家来
「刀は・・・・武士の魂だ・・・・この意味は、わかるな?」

頷く農民たちに背を向け、、腹を切った男の亡骸を包み、運ぶための荷台に乗せてその男は去っていった。

男が去った後で、厳太が平蔵に言う。

厳太
「この刀は、お前がもってろよ」

平蔵
「いや、でも、俺は刀なんて使えない・・・・」

厳太
「俺には、昔から持ってる使い慣れたのがある・・・」

村人の一人が言う。

村人
「そうだな、、指揮をとってくれるんだろう?なら、腰に刀くらい下げとけよ」

いわれた男は頷き、農民には似合わない刀を下げて、一揆をするために向かっていった。

平蔵
「お前の正直さがうらやましいよ」

厳太
「おれも、お前の頭のよさがうらやましかったぜ・・・・」

平蔵
「いいのか?」

厳太
「いいともさ」

男の立てた作戦は、、力に自信のあるものが囮となって城に押し入り、残った者が混乱に乗じて火を放つ、というものだった・・・・つまり、、囮になる者たちは、まず間違いなく生きては帰ってこれない・・・・。娘を失ったこの男は、その先陣を率いる役を買って出た。

農民たちは戦に負けてみな殺されてしまったが、、、農民達の作戦と動きは城攻めに対して非常に理に適っていたという・・・・。
一揆の指揮を取った男の腰には、鞘に納まったままの一振りの刀があった。

巡り巡り、その刀は様々な人々を渡り継ぎ、そのすばらしい切れ味から名刀と呼ばれ、手に持った者は必ずこう言うのだ。

これは、なんという名刀!まさに妖刀村柾よ!

その言葉に違わず、人を斬る為に使われてきた・・・・。

やがて上杉謙信の家来によってこの刀はその手に渡る。

家来から渡されたこの刀をみた謙信も、同じ言葉を発した。

謙信
「すばらしい名刀じゃ」

・・・・次に発せられた言葉は、、ほかの者とは違っていた。

謙信
「だが、わたしはこの刀を戦場では使わぬ・・・・いや、使えぬ」

その言葉に驚く家来を制止し、、謙信は呟く。

謙信
「なんとも、悲しい気を纏った刀よ・・・・」

この刀から発せられる、悲しみに気が付いた謙信は、この刀を戦場などに持ち込むことも、人を斬る為に使うことも一切しなかったという。

この刀を後世に語継ぎ、、遺したのは、他ならぬ・・・・農民たちを一揆に追い込んだ、お上当人だった・・・・。

農民の一揆によって、死を考えるほどまでに追い込まれたそのお上は、後に常々農民は怖い、と言っていたという・・・・。


お上が一揆のことを憂いていると、家来の一人が言った。

家来
「お上は・・・・お上として当然のことをしたまでです、、年貢を納め、それを取り立てるのは、われらの役目です・・・・あまり気に悩みますな」

お上 「当然、、か、、規則としては、そうかもしれぬな・・・」

お上 「だがな、、あれは紛れも無く、余の間違いが招いた結果じゃ」

農民が持っていた、刀を元の持ち主の遺族に返し、農民を手厚く葬るようにとの命を出した
この城主は、、最終的に同じような農民たちの肩を持ち、農民の気持ちを汲む政を行ったが
結果として殿に逆らう事態を招き・・・・。

お家断絶、刑場の露となる憂き目を追うことになるが・・・刑場に行く一時こそ恐怖と不安の篭った顔をしたが、処刑されるときも憮然(ぶぜん)とした態度でいたという・・・・。

最期に何か言い遺す言葉は無いか?

お上
「血縁だ、肩書きだ、などと申しても、、同じ人ではないか・・・・。
なにが違うというのか・・・・それに気がつくのに少し時間がかかった・・・・」

処刑人の問いにそう答え、小さな城の城主は逝った。

その刀はその城主の元に戻ってきた一人の家来によって、城主と農民とその刀の持ち主の意思と共に、後の世に遺される事になる。

この刀を父から手渡されたとき、、最初こそ喜んでいた麗華だったが・・・・。

ふっと、もう一度静かに、刀を見つめたかと思うと、謙信と同じ事をいったのだ・・・・。

麗華
「この刀、、悲しさをすごく感じる・・・・だけど・・・・」

・・・その後の言葉は、謙信とは違っていた。

麗華
「同じくらい、誰かを護りたいって、、そんな想いも感じる・・・・」

こうして、幾多の人を斬り続けてきた刀は、謙信から長い時を経て、麗華へと受け継がれた・・・。

麗華の父であるレオンは外人であるが、母の霧月恋華(きりつき れんか)は日本人である。

父は白人だが日本の文化と侍に敬意を抱いていたため、娘には母の苗字と名前をつけた。

母である恋華の血筋を辿っていくと、足利将軍 義輝 に行き着く。

そして、麗華は、、、義輝に最後まで忠義を抱いていた、上杉謙信の生まれ変わり・・・・。

義輝の血を受け継ぎつつも、義輝に最期まで敬愛を抱いていた上杉謙信の生まれ変わりでもある。謙信の分家はいるが、謙信自体は貞操を貫いたままで死んだため子孫がいない。

その刀の気持ちを汲み取った謙信の生まれ変わりである、麗華の元へと流れ継いだのは、空蝉が望んだことでもあったのかもしれない・・・・。


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